動物病院で使われる予約には大きくわけて3つのタイプがあります。
3つのタイプは順番取り・時間帯・時間予約です。
各メーカーから様々な予約システムが提供されていますが、実際には各メーカーによる差は微々たるものです。必要な機能はほぼほぼどのシステムには含まれているため、感覚的な触った印象やお気に入りの色使いなどで選択頂いても問題無いケースが多いです。
ただ、先述の3タイプについては自院に何が合うかをしっかりと見極めて頂く事が重要です。
弊社は順番取り・時間帯と2つの予約システムを扱っており、それぞれの病院様からのご意見を頂戴し、各病院の状況も把握しております。そのノウハウからそれぞれどのような動物病院様におススメかお伝え致します。
各予約タイプの概要
前提として、それぞれの予約タイプに優劣はございません。ただし、業態や各院の状況によって向き不向きは多いにございます。下記に各タイプの概要をまとめます。
順番取り予約
当日の順番取りを行うタイプです。人の医院でもよく見かける予約システムで、古くは病院前で並んでいたり、名簿に記載する形でしたが、同じ事をWEB上で行うイメージです。
時間にコミットしていないため、予約される方は特定の順番がくると来院されます。
メリット
- 予約カバー率が高い
- 多くの患者に対応可能
- 限定的な混雑緩和
- 導入ハードルが低い
- 来院前準備ができる
- 飛び込み患者等にも対応可能なケースがある
後述の時間予約・時間帯予約に比べ、①順番を取る②順番が来たら来院するというシンプルな操作であるため、予約を病院に導入する際のハードルが低い事が大きなメリットです。
予約される患者さんはもちろん、病院操作側も簡易にできる傾向にあります。
時間予約に比べ、枠の上限が無いため、キャパが許す限り多くの患者様に対応可能です。
また特性上、予約開始時間に予約が集中するため、午前中の大まかな診察数や診察内容をスタート段階で確認頂ける事も隠れたメリットです。
デメリット
- 混雑解消効果は限定的
- 病院・患者双方ともに時間コミットは弱い
- 勤務時間の改善には向かない
一日の診察可能数に上限が無いため、青天井で診察可能です。(※システムにより一部対応可能)そのため、患者さんごとの待ち時間は極端に解消しますが、病院の多忙さは変わらないケースがあります。
時間予約
特定日の特定時間(15日の15時30分など)を押さえる予約するタイプです。歯科医院や美容室で多く見られる予約で、患者さんに対しての所要時間が固定されている事が上手く運用する条件です。
予約される方・受ける方双方にとって、時間がコミットされるため予定を立てやすいメリットがあります。
メリット
- 予定が立てやすい
- 残業時間が無くなるor少ない
- 混雑は起きない
- 忙しい患者の来院が見込める
完全に時間が確定されるため、病院・患者双方ともに所要時間が計算できるのがメリットです。時間あたりの人数を調整できるため、不要な混雑や待ち時間も基本発生しません。
そのため、病院スタッフのシフト管理や患者さんの予定も立てやすく、多忙な患者さんの集客につながる可能性があります。
デメリット
- 予約時間にズレるとクレームが発生しやすい
- あるキャパを超えると予約ができない状態が発生する
- 飛び込み患者・非予約者への対応が難しい
時間が固定されるため、急患や診療時間の大幅な増加などのアクシデントに弱くなります。
そのため、全科診療が多い動物病院での全面的な導入は難しくもあります(部分的な何かの治療に絞るなどの場合は有効)。
また、患者様の多い病院や繁忙期などはキャパオーバーを起こしてしまい、予約できないという事態が発生します。
あらかじめ工夫が必要です(人気の飲食店やコンサートで起きる現象で、来院したい方が来れない失客に繋がる可能性があります)。
時間に間に合わないクレームから、レビューが悪くなったや、予約はもう懲りたと辞められるケースが多く感じます。
時間帯予約
時間予約と似ていますが、こちらは特定日の特定時間帯(15日の15時30分~16時など)を押さえる予約タイプです。時間予約に比べ遊び部分があるため、患者あたりの所要時間について少しアバウトに運用が可能です。
通常、同じ時間帯(1枠は30分~1時間程度)に数人の患者さんが予約できますので、予約時間に行っても待ち時間が発生するケースがあります。
例:9時~9時半までの予約枠があり、そこに3人の予約者があった場合、3人は来院順の診察となり、最大30分の待ちが発生します。
メリット
- 予定が立てやすい
- 残業時間が無くなるor少ない
- 混雑は起きにくい
- 忙しい患者の来院が見込める
時間予約ほど完全に時間を指定される訳ではありませんが、同様のメリットを時間帯予約でも得られます。
待ち時間は発生しますが、枠の範囲内と限定的であるため、予定の見通しは双方ともに立てやすくなります。
デメリット
- 予約時間を大幅にズレるとクレームが発生しやすい
- あるキャパを超えると予約ができない状態が発生する
- 飛び込み患者・非予約者への対応が難しい
待ち時間に関して、時間予約程シビアではありません。また、枠の幅や、何人を枠内で診察するかなど、調節が可能です。
ただし、非常に多い予約者が発生する場合は、予約が取れないという問題が発生する可能性があります。
動物病院の状況別 お勧めの予約タイプ
予約タイプのそれぞれの概要から、動物病院にお勧めの予約システムは順番取り予約か時間帯予約です。
歯医者や美容室など診察項目が限定的かつコントロールできる。また突発的な急患等も発生しにくい業態には時間予約が向いていますが、全科診察&少人数の動物病院では厳密な時間予約は難しいかと思われます。
そこで残りの2つの予約タイプ(順番取り・時間帯予約)についてどのような病院様が向いているか、全国での調査やご利用病院の状況をもとにお伝え致します。
ちなみに下記が全国でのWEB順番予約と時間帯予約の導入割合です。
順番予約がお勧めなケース
- 予約を始めて導入する
- 病院で初めて予約を導入する場合、導入のハードルの低さから順番予約がおすすめです。予約スタート後、問題になるのが予約が出来ない方へのフォローですが、順番予約であれば対応可能です。
- 現時点での待ち人数が多い
- 検討される時点で待ち人数が多い場合は、希望日に予約できない難民ユーザーが出現してしまう恐れがあります。
- 弊順番予約システムだと1日30~80名程度(獣医師1名)範囲の病院様の利用が多いイメージです。
- 診察時間がマチマチor長引く事が多い
- 患者さんや診察内容によって、大きく診察時間が前後する場合は、時間にコミットしない順番予約がお勧めです。
- できる限り多くの患者さんを診察したい
- 時間帯予約は1日・1ヶ月の診察枠を最初に定めます。調整は可能ですがアッパーが決まります。そのため病院をどんどん伸ばしたいケースでは上限の無い順番予約がお勧めです。
時間帯予約がお勧めなケース
- 開業間もないorこれから開業される
- 予約を躊躇される病院の理由の多くが、既存患者に配慮しての事です。現在の診察スタイルに慣れている方への変更を嫌われている印象です。
- そこに配慮するならば病院をスタートするタイミングが最もお勧めです。こういう病院だと認識して来院されるため、比較的クレームも少なくなります。
- 実際に新規開業病院様への導入は圧倒的に時間帯予約システムが多いです。
- 勤務時間の是正をしたい
- 時間帯予約のメリットは患者さんもですが、病院スタッフにも時間
- 働き方が変わってきている時代です。働きやすい環境を整えるには時間帯予約がおススメです。
- 院内の混雑を無くしたい
- 調節次第ですが、時間帯予約は確実に院内混雑を緩和します。
- コロナ禍は落ち着きましたが、引き続きの対策として院内密の回避や、駐車場や待合室のキャパの問題がある場合に改善が可能です。
- 指名制を導入している
- 今の診察に指名制や一部指名制を導入している場合、時間帯予約の相性が良いです。
予約導入時は、病院に合うタイプの検討が最重要
弊社は元々順番予約システムを作成し、動物病院様にご紹介をしてまいりました。
そこで「こんなタイプの予約がある事を知らなかった」というお声を頂く事があります。
はるか以前より予約制を導入している病院の多くが時間予約であったため、予約制=時間予約というイメージが強くあるように感じます。
そのため、予約制が合う病院と合わない病院という二元論で語られてしまう事が少なからずあります。
実際には予約システムも進化しており、順番予約や時間帯予約、その他機能面の工夫によりキッチリとした予約制ではないが、院内混雑のために導入など、グラデーションある使い方が可能です。
ご検討の際に参考にしてください。