令和4年5月1日に愛玩動物看護師法が施行され、現在2回の試験を経て2万人以上の愛玩動物看護師が誕生しています。

複雑化する獣医療における役割りをこれまで以上に期待され、社会的な地位も向上していくでしょう。

また、国家資格化された事で、技術や知識の一定の担保が保たれる事になりますので、期待していた能力と違うや求められるスキルが違ったといった、求人・採用時の不一致が減少される事も期待できます。

 

一方で、知識や業務内容の平準化が図られる事で、転職市場(具体的には同業別病院への転職)の活発化も予想されます。

現状でも動物看護師の採用や定着でお困りの病院は多くありますが、今後益々採用の困難化と二極化が促進されていくのでは無いでしょうか?

そもそもの働き方改革から始まっている流れに加え、動物業界では看護師の国家資格化という大きなイベントが起こりました。

今後の動物看護師の採用や定着には、今までの延長ではなく、トレンド踏まえた改善が求められます。

 

そこで、当記事では公表されているデーターを元に、動物看護師の現状をお伝え致します。また、今後も動物看護師に選ばれる動物病院であるための改善案を提示致しますのでご参考にして頂ければと思います。

動物看護師の就業に関するデーター

日本動物看護職協会が2020年に1455名を対象に大規模アンケートを実施されています。

こちらのアンケート結果をメインに引用させて頂き、現在の動物看護師の就業状況をお伝え致します。

動物看護師の平均勤続年数

動物看護師の離職率のデーターは見当たりませんでしたので、勤続年数のデーターを提示します。

下記の図は、冒頭紹介した大規模アンケート結果からの抜粋です。

出典:動物看護職の勤務実態に関するアンケート調査報告

勤続年数を各々に記載頂いたものですが、アンケート結果を元に計算すると、平均勤続年数は8.2年、中央値は6.9年という結果です。

そのままの比較は難しいですが、人の看護師の平均勤続年数が10.6年、歯科衛生士7.5年、一般女性労働者9.8年と比べて極端に低いものでは無いようです。

一方で、1年未満の勤続年数が最も多いというのも動物看護師の特徴です。

1年未満の社員が多いという事は、「業績が急拡大しているため」か「退職が多い」ために新人が常にいる状態です。恐らく動物病院は後者ではないでしょうか。

動物看護師の勤務時間

続いて下記は、1日あたりの平均勤務時間のグラフです。

出典:動物看護職の勤務実態に関するアンケート調査報告

アンケートによる回答であるため、労働時間とはイコールでは無い点に留意が必要ですが、平均勤務時間は9.7時間とかなり長い傾向にあり、勤務時間・拘束時間の長い仕事であるといえます。

また、下記は週の勤務日数と先ほどの平均勤務時間を表にまとめたものです。

最も多いのが、週5勤務の8~9時間ですので、パートではなくフルタイムの就業状況が伺えます。

出典:動物看護職の勤務実態に関するアンケート調査報告

1週間あたりの勤務日数が3日以内の割合が4.8%、1日あたりの勤務時間が5時間未満が2.5%と個人的なイメージより少なく、短時間労働やパートタイム枠の活用があまり進んでいないと言えます。

※参考:人看護師の短時間労働・パートタイムの割合は10.9%です。(出典:日本看護協会調査研究報告 2021 年 看護職員実態調査

動物看護師の給与体系

最後に給与の部分です。

下記は年収のアンケート結果をまとめたグラフです。

出典:動物看護職の勤務実態に関するアンケート調査報告

最大のボリュームゾーンが200万円未満、次点が200万~240万円と低い傾向にあります。

計算すると平均年収は269万で、人の看護師の平均年収が508万円に対して大きく差がある状況です。

 

動物看護師の就業状況まとめ

今まで御覧頂いたいくつかのアンケート結果をまとめると下記の要素になります。

  1. 勤務時間が長い
  2. 給与が少ない
  3. 勤続年数が極端に短い層がある

やや誘導にもなりますが、勤務時間の長さと給与少なさが定着率に繋がっているといえます。

実際に動物看護師を続けないという理由では、「給与が安い」「将来が不安」「勤務時間が長い」という声が多数上がります。

一方で動物看護師という特殊な職業に誇りをもっている方も多く、命に関わる・動物に関わるという事に使命感を持たれているケースが多いです。

しかし、働き方改革が実施され久しいなかで、今後も継続して働ける環境を作る事が必要です。

動物看護師の就業状況改善

働きやすい職場や動物看護師が働きたい(求める)病院になる為の対策に関していくつかあげさせて頂きます。

①短時間シフトの導入・活用

人の看護師でも人員の確保というのが課題になっており、ライフステージ(妊娠・出産・育児・介護など)による退職が多い事から、それらの対策として多様な働き方を認める流れが強いようです。

その結果、下表のように勤続年数は増加傾向にあるようです。

パートタイムの導入がデーター通り、あまり浸透していないのであれば、全面に打ち出すのもありかも知れません。

②動物看護師の教育方針の充実

退職理由として上がる、将来が見えないについては、金銭面もありますが、スキルの向上が見込めないも含まれます。

人看護師では、入社年次による研修(新人研修・何年次研修など)など教育プログラムを充実する流れがあります。

③十分な給与

動物看護師の平均年収は269万、別のデーターでは320万円というものもありました。

下記表は転職サイトdodaから2023年の引用で、正社員の年代別・性別の平均年収を表したものです。

年齢や働き方にもよるため、純粋な比較は難しいですが、一番の下の20代で比較しても決して多くは無い(むしろ少ない)事がわかります。

出典:正社員の年収中央値は?男女別・年齢別・都道府県別にも解説

先述の通り、国家資格である人の看護師が508万円である事から、求められる責任やスキル・拘束時間を考えるとやはり見直す必要がありそうです。

④診療体制の見直し

不満に多いもう一軸である「勤務時間」について、根本的な見直しは如何でしょうか?

1年を通して診療数に波がある動物病院では簡単に人の増員は出来ないと思われます。

であるならば、混まない・診療時間を大幅に超えた診察を減らすなどの根本的な対策が必要です。

 

弊社では動物病院様に対して、WEBページの制作も行っておりますが、新規開業の先生からのご依頼も多く承っております。

その際に、開業と同時に予約制を導入される病院が非常に多い事に驚かされます(体感で7~8割の病院様で導入)。

理由を伺うと、予約制を導入して働く時間をしっかりとコントロールしたい(院長ご自身も残業したくない)というご意見です。

我々が扱っている含め予約システム(もしくは順番取りシステム)も日進月歩で進化しており、動物病院・飼い主様の導入負担も少なくなってきています。

「予約システム」の導入がおすすめ

長年動物病院と関わっていると、動物看護師の採用や定着にお困りの声を度々伺います。

なかには、ある日スタッフ全員が突然来なくなったというぞっとするような怖い話もありました。

 

人手不足と国家資格化というイベントでの変化を考えると、目先の対策だけでなく、長い目で見た雇用待遇の改善を図っていく必要があります。

しかし、給与面の改善は一朝一夕では進みませんし、「やっぱり元に戻す」とも言えません。

まずは労働環境の改善、ひいては予約システムの導入を検討されてみてはいかがでしょうか?

予約といっても様々なタイプがあり、弊社でも複数の予約タイプを扱っております。

なかには、病院のシステムを大きく変える事なく導入できるものもあります。

動物看護師の定着や採用にお悩みであれば一度お声掛けください。